幕末関東の武術諸派

 以前、萩原連之助の記事で参考にした「幕末関東剣術英名録の研究」には、関東諸藩の武術諸派について詳しい記載がある。この中から剣術と柔術諸派について述べる。

 

 中世末、流派成立期における武芸は「兵法」なる語で概括される総合芸術であったが、江戸時代に軍学、弓術、馬術、剣術、柔術、砲術、水術などに分化した。

 武術は、士農工商の身分制の確立により、武士階級にのみ伝承するとともに、武士階級内における家格の確立とともに、武術そのものにも階層性を生じた。

・最上級家臣:軍学

・上層:弓術、馬術

・上下問わず:剣術、砲術、槍

・最下級:棒、捕縄、取手など

 

 関東21諸藩における武術諸流派一覧から読み取れることを以下に記す。

 

1.剣術

 流派は、神陰流、直心影流、北辰一刀流、小野派一刀流、念流など。延べ数で64にもなる。

 伊勢崎藩は直心影流のみであるが、前橋藩は4流派であった。流派の数は各藩それぞれで、決まりがないように見える。

 

2.柔術

 流派は、起倒流、浅山流、天神真揚流など。延べ数で40になる。

 澁川一流柔術の関連では、渋川流が笠間藩、浅山一伝流が水戸藩で採用されている。

 なお浅山一伝流は、剣術として佐倉藩と忍藩に記載されている。

 

<参考文献>

・幕末関東剣術英名録の研究、昭和42年発行、渡辺一郎著 

 

明治二十一年 皇国武術英名録より氣樂流柔術

 

2023/02/01 カジタ