貫汪館 横浜支部稽古

家を出るとぱらぱらと小さな雨粒が落ちてきました。まだ傘をさすほどではなし。

折り畳みの傘はリュックに入っています。塩飴とベープと汗拭きも。

稽古道具は、居合刀と大石神影流の鞘木刀のみ。

途中の自販機でポカリスエットを買います。

 

体育館に到着すると、デンさんはもう来ていてモップ掛けもしてくれたとのこと。

かたじけない。着替えながらいつもの雑談。

 

陽進陰退について質問あり。

陽進陰退という言葉は、中国の陰陽思想が元ですとお答えしました。

易経や太極理論、陰符鎗總訣などについてはお話しせず。

陰陽と順逆が、大森流の基本コンセプトかと思います。

八卦を基本コンセプトにしている流派もあるようですね。

メジャー流派なのに、現代でも極めて秘密主義でいらっしゃいます。

あの理論は素晴らしいと思います。とても科学的です。

 

6時過ぎに稽古開始。

扉は閉めたまま。持参したベープを床に置きました。電池でファンが回ります。

---------------------------------

大石神影流剣術

 

<礼法>

右足を引いて膝を着き、両手を床に着けます。動作はとても単純です。でも難しい。

単純な動作だからこそ、その人のレベルが一目でわかってしまいます。

 

足をがっと引いて、袴の裾をばさっとひるがえし、膝をドンと着いて。ではなく。

静かに重心が下りながら右足はするすると引かれ、膝はいつの間にか床に着きます。

この間、一切、音はしません。

上体を折り曲げるのではなく、沈むように両手が床に着きます。うやうやしく。

立ち上がるのも同じです。ガサッ、バサッ、ドンと動くのではありません。静かに。

 

勢いで動く癖は、なかなか取れません。

ゆっくり静かに動きますが、ブレーキをかけているようでぎこちない。

アクセルとブレーキを同時に掛けているようなものですね。

最初からアクセルをふかさなければいいだけなのですが。

必要最小限の力で動く。それが難しいのかと思います。

よほど細心に、気を配って動かなければ身に付くものではありません。

しばらく繰り返しました。

 

<構え>

真剣、上段、下段、附け、脇中段、脇上段、車、裏附け

 

深い呼吸に合わせて動きます。形を作らないように。全身を弛めて。

手先で刀を動かすのではなく、全身が動いた結果その形になる。

動くたびに重心が上下しないように。常に沈んだままで。

体が上がるように見えるときこそ、実際には沈まないといけません。

しばらく繰り返しました。

 

<素振り>

真剣から上段になり、また真剣に戻ります。

 

足はその場で、前進後退などはせず。速く振ったり、強く振ったりもせず。

深い呼吸に合わせて、もっとゆっくり、全身を弛めたままで。

刀と体を一体化させることを学びます。

しばらく繰り返しました。

 

<試合口>

一心、無明一刀、水月、須剱、一味 

礼法から。仕太刀を通してもらい、打太刀も通してもらいました。

 

今回、気合も出しました。ホー、エー。

週末の夜の住宅街ですから、いつもは遠慮しています。

でもどうやら、他の団体さんは普通に声を出していらっしゃるそうです。

それにいつの間にか雨も降ってきましたので、音の問題はなさそうです。

最初は遠慮がちでしたが、交代して繰り返しているうちに肚から出るように。

 

試合口の手順は単純です。さすがにもう忘れたり間違えたりはしません。

でもだからこそ、動きの質がよく見えます。肚で動くことが大事です。

何度か繰り返しました。

 

大石神影流は、1時間ほど稽古。

礼法に一番時間を費やして、それから構えと素振りと。

手数がメインで、基本はオードブル、礼法はデザートというわけではありません。

どれも大事ですが、基本こそが大事なのかなと思います。

基本ができずに手数ができるわけもなし。

---------------------------------

少し休憩。

デンさんには水分補給をしてもらいます。

持参したポカリは飲みませんでした。

---------------------------------

無双神伝英信流

 

<大森流>

礼法から大森流を通して抜いてもらいました。入場から退場までの審査形式です。

いきなりですが、審査当日もいきなりですし。

結果はもちろん、ガタガタでした。あちゃー、がっくしな感じです。

 

高校の音楽の授業で合唱のとき、朝一番の声が本番の声、と習いました。

朝いきなりは声が出にくいけれど、本番もそんなものしか出ないものだよと。

体調もあるでしょうし、気持ちの問題もあります。

常にベストで動けるように留意すべきですが、常に好条件なわけもなし。

与えられた状況の中で、ベストを尽くすべきでしょう。

もちろん、普段の不断の努力は必須かと思います。

 

<礼法>

刀を手に持つ位置から再確認。

持つ位置が悪ければ、重心がずれて、合理的な動きはしにくくなります。

位置が1センチずれるだけでも、感じる差異はとても大きなものになります。

何センチ何ミリと規定するのではなく、自分で合理的な位置を探す必要があります。

 

刀礼自体はとても良い動きをされていました。

抜き付けにも通じる動きです。すべての基本かと思います。

 

帯刀の動きが不自然でした。どうでもいい動作とは思えません。

何度も何度も繰り返しました。

 

<大森流>

初発刀から一本ずつ手直し。

 

どうしても、上体を起こして腰を上げて、手で刀を抜いてしまいます。

稽古しても稽古しても、この動きに戻ってしまう。残念でなりません。

礼法はあんなにお上手なのに。

上体は前に転がり、切っ先が体の下で抜けるまで、腰は上げません。

手で抜けてしまうから、体を起こしてしまうのでしょう。

デンさんには、二尺八寸でも短いのかもしれません。

一度、もっと長い刀を抜いてみれば、この意味がわかるかもしれません。

身長六尺なら、三尺でも長すぎるということはないかと思います。

 

左刀、右刀、當刀、陰陽進退、流刀、順刀、逆刀、勢中刀、虎乱刀、抜打

一本一本、根気よく直して行きます。

すでにお伝えしてあり、一度はできていることばかり。

忘れているのを思い出す手助けをするだけです。

陰陽進退の張り受けは大きな課題の一つです。そこからの運剣も。

流刀は止まらない。

順刀は最初の半歩が肝です。

逆刀は手で抜かない。前に立って柄頭を手で押さえた状態で、抜いてもらいました。

勢中刀は回らない。引く動きで抜き払う。

横に開いてからの納刀は、まだまだ要求を満たせていません。

 

大森流が初心者用、とは思えません。とても高度な内容を含んでいます。

英信流表奥太刀打詰合までを稽古して、それで初めて、ああこういう動きなのかと

理解体得ができるのかもしれません。

 

最後に再度、礼法から大森流を通してもらいました。

最初に通したのとは、まるで別人のような動き。

最初の動きでも、審査には合格できることでしょう。でも内容は三角。

最後の動きは、二重丸か三重丸をあげたいくらいでした。

 

見ていて眠くなるようでした。これは褒め言葉です。

静かで、音がしない。勢いで動かない。無理無駄がない。

ただ勢中刀で、右手が動きました。そこではっと眠気が覚めました。残念。

 

いま一番の課題は、握らないこと、かと思います。

抜き付け、運剣、斬撃、血振るい、納刀。

ぎゅっと握り込む瞬間はありません。いつもそのまま。常に柔らかな手の内です。

と、常々繰り返し説明していますが、まだまだ意味が理解できていないようです。

握り締めて振り、止めるもの、という価値観から脱することができない。

根が深い問題です。

 

無双神伝英信流は、約2時間の稽古

礼法に時間がかかるかと思いきやそんなこともなく。

大森流の稽古に集中することができました。

 

いつも稽古の最後には、とても良い動きになります。

でも次回の稽古ではまた最初から。

そして来週はデンさんまた休み。再来週の稽古はどうなることか。

---------------------------------

帰りには本格的な雨が降っていました。

折り畳みではなくて大きな傘を持ってくれば良かったなあ、なんて思いました。

 

また長くなってしまいました。これでもだいぶ省略したのですが。。。

アップも遅いし。すみません。

 

来週はまた独り稽古の予定です。 

H26.7.3