貫汪館 本部講習会

桜は毎年楽しみの一つで、いつ咲くかいつ咲くかと心待ちにしています。
でも、毎年そろそろ満開かというちょうどその頃に雨が降って散り始めてしまい。
桜は散るのが風流ではありますが、あまりに早く散ってしまうのは残念です。

先週土曜の稽古の頃にはもうそろそろ満開かというところでした。


翌日曜は家族で公園に行って桜を見ながらお弁当でも食べたいところでしたが、残念ながらあいにくの雨で。
代わりにという訳ではないのですが、家族で根津美術館へ行って、清麿を観てきました。

http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/past2014_n02.html
これはこれで一興だったようで、それなりに喜んでもらえました。

ところで、麿という字は麻呂だよなあと思いながら、山下風を思い出すのは私だけ
でしょうか。
山下風、山颪、山下、颪。いろいろな表記があります。
伝書は縦書き、かつ手書きで文字の大きさが均等ではなかったからゆえのこと。
少なくとも横書きなら、こういった表記ゆれはなかったのではないかと思います。

 

翌月曜は一日仕事を休んで子供の体操の大会へ。
着地がわずかに乱れただけで-0.05点。それだけで上位入賞はできません。
1年間みっちり練習をして、一瞬の演技がすべてです。やり直しはできません。
厳しいのは、とくに武道の世界だけではないのではないかと思います。

 

さらに翌火曜日は4月1日。今の職場では1年で最も忙しい日でもあります。
2日~3日も同じく目が回るように忙しく。
4日の夜には広島へ。週末に備えて前泊です。
5日は本部講習会、6日は広島護国神社奉納演武。

 

ああ忙しい。これでは稽古日記を書く暇がありません。
そんなわけで、先週はがんばって早めに書き上げたのでした。
こんな、稽古日記を書くのが遅い言い訳を書く暇があったら、本文をさっさと書けと言われてしまいそうです。はい、すみません。

北大阪支部長の筆の早さは見習わなければ、と常々思っています。
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さて、4月5日(土)は貫汪館本部講習会でした。
詳細は北大阪支部の稽古日誌をご覧ください。
http://kanoukan-kita-osaka.jimdo.com/稽古日誌/

以上

 

・・・というわけにも行かないので、蛇足の感もありますが少し記します。

場所は貫汪館本部道場の稽古場所でもある、廿日市スポーツセンターです。
午前はサブアリーナで大石神影流剣術、午後は武道場で大森流の講習でした。
貫汪館本部道場の門人、竹本道場長夫妻、七尾道場長、名古屋西支部長、
北大阪支部長、横浜支部からはデンさんと私の参加がありました。

 

大石神影流剣術は、試合口、陽之表、陽之裏、三學圓之太刀をさらっと復習。
デンさんには、どうせ1~2回しかやらせてもらえないよ。とお伝えした通り。
館長が見て回ってくださいますが、打太刀と仕太刀を交代して1セット程度。
はい次、はい次、といういつものペースです。
そうそう何度も手取り足取りは教えてはもらえません。自助努力が大事
へぶんへるぷすぞーずふーへるぷぜむせるぶず
ごっずいんひずへぶんおーるらいとうぃずざわーるど
かたつむりえだにはいかみてんにしろしめすこれは違うか

 

講習会ではいつも兄弟子や顧問の先生と組んでいただきます。
最近は、七尾道場長と組んでいただくことが多いです。稽古でも演武でも。
今回も相手をしていただきました。
翌日の演武でも組んでいただきますので、その予行演習にもなります。
普段、手合せしていませんので貴重な機会です。
加えて、あれこれと指摘もしていただきます。
向かい合って組むと、いろいろとよく見えるものです。
私もいつもデンさんと組んで稽古をしていますので、デンさんになにか変な癖が
ついたらすべて私のせいだと思っています。責任重大です。
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さて、今回の目玉。槍合と棒合。

 

槍合は、剣で槍に対します。
槍は館長のコレクションの出番です。一間を超える長さの槍。先端は三角。
槍身は錆びて、柄は赤茶色く、時代掛かり。それを稽古に遣うのがまた。
一本しかありませんので、皆は六尺棒で代用。
槍合は簡単です。右に入り身するか、左に入り身するか。ただそれだけ。
あと必要なのは、踏み込む度胸でしょうか。それが難しいのですが。

 

気になるのは、三歩進んで間合いで止まること。大石神影流の手数の共通です。
そこから突かれて、入ります。
ただ、これだとどうしても読みや反射神経の勝負になってしまいそう。
私としては、止まらずに入りたい。すたすたと歩きながら入る。
その方が、やりやすいような。間と間合いの勝負です。
その点、太刀打詰合は、止まりませんのでやりやすいのです。
それとも単に好みの問題でしょうか。
でも、流祖の好みや癖が、その流派そのものなのだと言えるのかと思います。

 

なんにしろ、剣で槍に勝つのはハンパなことではなさそうです。
ただ、代用の六尺棒よりも、より長い槍の方がさばきやすい気がしました。
それはももちろん六尺棒がどうとか槍がどうとかいうことではなく、
槍に対する技術を稽古しているのだから、当然のことかと思います。

 

棒合は、棒で剣に対します。
槍合は剣で槍に対したのに、棒合は剣で棒に対するのではないのですね。
ちょっと不思議です。
いつもと同じように三歩進んで立ち止まり、棒を右に立てます。
打ち合わせ、さばいて勝つ。
棒のさばき方、体のさばき方。いかにも大石神影流の動きで、思わずにやり。
長くて重い棒をこういう方法で打ち込まれたら、剣でさばくのは難しそうです。

 

槍合二本と棒合三本。また新しい世界が開けました。ドーパミン出まくりです。
長刀合は残念ながら今回はなし。次回以降のお楽しみです。わくわく
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防具着用稽古
二人一組で向かい合って立ち、片側の人が好きな構えから打ち込みます。
一本終わると、横にずれて相手を変えて繰り返し。回り稽古というやつでしょうか。
私は約束一本稽古と認識していましたが、中には自由に打ち込んでくる方も。
うーん、手数と合わない。
でも館長は、次回はもう自由稽古にしようかとおっしゃっていました。うーん。

 

館長に頭をどっかーんと叩かれ、北大阪支部長から強烈な突きを頂戴しました。
逆に、こちらがわざと棒立ちになっていても、まったく打ち込んで来ない方も。
竹刀での自由稽古は、技量もあるけれど、性格が出るなあと思いました。
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午前中は少し早目に切り上げて防具の片付け。
お昼はお弁当を美味しくいただきました。

 

メインアリーナでは、卓球やバドミントンなどの練習をしている方たちが。
神奈川県立武道館では、剣道場、柔道場、小道場、弓道場いずれもお昼は休憩です。
なんだかちょっと不思議な気がしました。
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皆で大量の荷物を持って、武道場へ移動。
柔術の方もいらして、明日のリハーサルです。
小さな子供たちがメインで、兄弟子たちはその受け。

 

その間、居合・剣術の門人は、板の間で自由稽古です。
北大阪支部長に誘われて、三學圓之太刀の稽古。
手数は順番を覚えるのが大変です。でも三學圓之太刀は、比較的覚えやすい。
二本セットの変化応用という流れが見えます。続く二本、前半後半。縦横、左右。
手数自体もそれほど込み入ったものはありません。
奥に行くほど単純になるのは、古武道では一般的な傾向かもしれません。
昔は、奥に行くほど奇妙奇天烈で神妙かつ込み入った形になるのだろう、
という幻想をいだいていましたが。

 

館長から、二刀と小太刀を再度教えていただくことができました。
だいぶ前の講習会ですでに教わってはいましたが、その復習です。
横浜支部でも稽古をしたく思っているので、事前にお願いしていたのでした。
一通り教えていただき、北大阪支部長と稽古。大変おもしろうございました。

 

その横では、本部道場の門人が一人で黙々と居合の稽古をされていました。
とても静かに粛々と、まるで行のようでした。
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さてさて、午後の講習会は、無雙神傳英信流抜刀兵法 大森流。
参加者の中には、奥や大小詰は習っていても、大森流は初めてという人も。
何を隠そう隠しませんが、我らが横浜支部のデンさんも、昨年12月の講習会で
太刀打・詰合を習ったのが最初です。
そんなわけで横浜支部でも、太刀打・詰合を中心に稽古していたのでした。
せっかく教わっても、忘れてしまってはもったいない。人間は忘れる生き物です。
せっかく教わったら、せっせと自分で稽古しないと。

 

大事おばみな請取と思ふとも琢ざるには得道はなし
物およく習ひ納むと思とも心懸すばみなすたるべし

 

ちなみに私はたまたまというか、大森流と太刀打の講習会から参加をはじめ、
一応、順番に教えていただくことができました。
ただ本来、武術武道というのは必ず相手がいるものです。
一人で勝手に動いても意味がない。
そういう意味では、太刀打・詰合を最初に稽古するのもありかもしれません。
林崎は本来、相手をつけての稽古だったのでしょうし。
居合は、より精密な動きを身に付けるために、独りのときに稽古をする。
ときおり師匠に見てもらって、手直しをしてもらう。
道場では二人で組んで、太刀打・詰合の稽古。
それも形の手順を覚えているかどうかを合わせて確認する、などということでなく。
手順を覚えるのは、稽古の準備でしかない。稽古とは、それから先のこと。
相手と組んで、何を稽古するのか。

他武道では、疑問にすらならないことかと思います。

 

現代居合道では、一人で刀の抜き差しをすることを居合と呼びます。
貫汪館の無双神伝英信流では、素抜き抜刀術と呼ばれるカテゴリーになります。
他に、太刀打・詰合、大小詰などをすべて含めて、抜刀兵法という流派です。
素抜き抜刀術は、抜刀兵法の一部でしかない。
抜刀兵法と書いて、“いあいへいほう”と読みます。

 

世間一般では、“抜刀”とは「試斬り」をする武道、という認識でしょうか。
(世間一般ではなく、武道の中での世間一般というべきでしょうか。
 世間一般では、抜刀という言葉自体、言うことも聞くこともないでしょう。)
これはもともと本来は「一人で行なう形」「二人で行なう組太刀」「試斬り」
の三本柱で活動していた抜刀道が、「試斬り」ばかりが注目されてしまい、
結果として「抜刀」=「試斬り」となってしまったということのようです。
「抜刀術」は古武道の居合で、「抜刀道」は現代武道の試斬りをする武道、
というのはなんだか不思議な気がします。
「剣術」と「剣道」、「柔術」と「柔道」、「居合術」と「居合道」なども、
単純に古武道が「~術」で、それが現代武道として昇華されたものが「~道」
というわけではないですしね。なんだか不思議な気がしますが。

 

ああ、すっかり話がそれてしまいました。どこが稽古日記なのやら。
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大森流の講習会は、もちろん初発刀から。
ではなく、手の内からでした。

抜いて中段に下ろし(あえて構えるとは言いません)、館長が見て回ります。

 

ところで「中段の構え」って不思議な表現ですね。なんの中段の構えなのか。
  脇の上段、中段、下段
  正眼の上段、中段、下段
私にはこの方が納得が行くのですが、あまり一般的ではないようです。
現代剣道のいわゆる中段に対して、上段は別の構えのように感じられます。
また、同じ中段でも、いろいろな構え方があるかと思います。

 

館長の厳しい目に適う人はなかなかおらず、かくいう私も指摘を受けました。
掛かりが深すぎる、握ろうとしてはいけない。赤ちゃんの手で包むだけ。
うーん、難しい。
最近の独り稽古では、掌と柄がぴったりフィットして一体化する感があって、
独り、にやけていたのですが。
言われたとおりに持とうとすると、上手く持つことができません。
研究しなければ。

 

続いて斬撃。
全身を弛めて腰が落ちた状態で、すーすーすーと歩きます。
左足で振りかぶって、右足で下ろす。力まずとも、刀はさーっと振り下ろされます。
全身の移動する力が、刀に乗る感じです。腕の力でその邪魔をしないように。
<腕の力>と<全体重が移動する力>のどちらが大きいかは、物理式で計算するまでもなくわかることかと思います。

 

大森流
館長が抜いて見せてくださり、皆で真似をします。問題があれば指摘。
真似をするっていう表現は良くないか。物まね上手は、貫汪館では下手のこと。
「学ぶ」は「真似ぶ」とも言います。でもそれは最初だけ。
いつまでも外形の物まねをしていても仕方がない。意味がない。
各人の体格や性格は違うのだから、まったく同じ動きにはなりようがありません。
それよりも、流派の動きの原理原則を身に付けて、それに基づいて動く。
その方が自然な気がします。

 

初発刀
一本目。大事な業です。館長も時間を掛けて指導してくださいました。
私も二点ほど指摘を受けました。
 抜きつけ 握り込んでいる。手で余計に振っている。
 血振るい 足で立ち上がっている。
抜きつけは、自分でもなんだかいつもと違うなと気になったところです。
久しぶりに館長の動きを見て、意気込んでしまい、勘違いしたのかもしれません。
血振るいは、普段から気になっていたことでした。うーん。
(→帰宅後の稽古で、これかな、という感じはつかみました。)

 

左刀、右刀、當刀
さらっと。初発刀と同じようなもの。

 

陰陽進退
立ち上がらない。張り受けは止まらない。

 

流刀
よくよく見て取ります。目を皿のようにして。
形もそうですが、動きを見て取りたい。

 

順刀
抜き払って立ち上がり、肩の後ろに吊るしたときは正面に正対すること。
斬撃は抱きかかえるように。右足はまっすぐ前ではなく、右前に踏み込む。

 

逆刀
尾てい骨を転がす。柄頭は相手の顔に指向する。
抜き出すとき、腕が高くならないように。低い位置で抜いて左から振りかぶる。

 

勢中刀
初動は逆刀と同じ。相手に応じる。

 

虎乱刀
腰を落とすこと。
腰が落ちていれば、歩幅は自然と大きくなるので、少ない歩数で大きく進む。
座っているのと同じ状態で、立ち、歩くこと。
それができれば、あとは抜いて、斬るだけ。

 

抜打
相手とは詰めて座している。前に抜き出すことはできない。
刀を右腰に抱きかかえるように、刃を平にして脇に抜き出すこと。
腕を上げれば、切っ先の重さで自然に振りかぶる動きになる。
背中で納める。

 

以上。
業については、相変わらずいつもと同じ感じですね。

大森流は、とても難しい。決して、初心者用の入門の形などではない。

それ自体で、一つの流派です。大森流。

座って抜き、立って抜き。そして、抜打。

剣術居合として見た場合には、十分な内容かと思います。

 

デンさんは翌日に用事がおありとのことで、そのままお帰りに。
飛行機で羽田へ飛んで、羽田で一泊して、翌日は北海道へと。なんとまあ。
北大阪支部長は出張とのことで、やはり日帰り。
皆さん、お忙しいことです。

 

講習会後は、会議室で貫汪館会議。
平成26年度の事業計画などについて1時間ほど話し合いました。

明日は広島護国神社奉納演武です。

H26.4.9