貫汪館 横浜支部稽古(県立武道館)

春の嵐はゴーゴーと吹き荒れて、暖かい日も増えてきました。
春といえば桜が楽しみではありますが、それより先に花粉の季節でもあります。
幸い鼻水はそれほどでもないのですが、頭痛がしたりして。
頭痛はハタから見てもわかりませんから、ちっとも気遣ってもらえません。
なんだ機嫌が悪いのか。いつものことだな。
なんて思われてしまうのは、日頃の行いというやつでしょうか。

 

前回同様、1時間早く家を出ます。でも、前回よりは少しのんびりめ。
前回デンさん県立武道館は初だったので、場所がわからなかったら申し訳ないと思って少し早めに出たのでした。でも今回はもう大丈夫でしょう。
6時前に到着して受付に並んでいると、後ろからこんにちはと。
またもやモヤさまアゲインと思って振り向くと、やはりデンさんです。
マスクをされていました。御多分にもれず、花粉症のようです。
ご挨拶して、先に行ってもらって、利用料の支払いを済ませます。
着替えて、モップ掛け。

6時15分から稽古スタートです。
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無双神伝英信流抜刀兵法

 

太刀打・詰合
前回はデンさんが初めての環境でどうなるかを確かめたかったので、ちょっと意地悪をしました。今回はもうその必要はありません。
太刀打詰合を最初に稽古すれば、そのあとの居合も稽古しやすいことと思います。

 

いきなり向かい合って、相懸り。下で抜き合わせ、真向に打ち込んで請けます。
単純な動作ですが、果たしてきちんとできているかどうか。
実は、きちんと真向を打てていません。
もしこちらが剣で請けなければ、中心をずれたところに当たりそうな感じです。
請ける剣には幅がありますから、かなりずれていても問題なく請けてしまえます。
自覚を持って稽古しなければ、できていないことに気付きすらしないかもしれません。
一人で空間を相手にしているのなら別でしょうが、実際の相手は前後左右に動きます。
きちんと中心にまっすぐというのは、簡単なようで難しいものです。

 

そのまま二本目、三本目と続けます。
形の名前を言って、構えを指示。かなりスムーズに進めるようになりました。
あらかじめ、あきらかにわかっていないなというときは(お顔を見ればわかります)
口頭で動作を説明します。以前よりも簡単に思い出せるようになりました。

 

詰合もほとんど問題なし。
例によって左右の足が違うこともありますが、途中ではこちらも気づかないくらい自然。
終わってから、あれいつの間に。という感じです。
形には形の構成があって、流派の思想を具現化したものです。
この形ではこの技法を稽古する、という主旨があるはず。
だから一応、この形ではこのカタチを稽古しましょう。とお伝えしておきます。
毎度のことですが。繰り返し繰り返し。

 

今回は、交代してもらって遣い方もやりました。久しぶりです。さらっと
45分ほどで太刀打と詰合を一通り。
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大森流
やはり今回は意地悪せずに、最初に一度抜いてお見せします。
留意点を簡単に説明して、それから抜いてもらいます。
問題があれば指摘して、修正してもらいます。
普通の稽古です。

 

初発刀
やっぱりどうしても時間をかけてしまいます。とっても大事です。
太刀打・詰合を稽古したあとなので、動きは良いです。
でも前々回ほどではありません。
稽古は、直線的に上達するとは限りません。実際には、行ったり来たり。
この間できたと思ったら、今度はできなかったり。
それでも総体的には上達しているはず。
ときには落ち込むこともあるかもしれませんが、それは次のバネになるはず。
長い目で見る必要があることと思います。
30分ほど稽古して、次へ。

 

左刀
やはりいきなりは動けませんでした。一度立ってもらって、左右にぶらぶらと。
思い出したようです。座ってもらうと動けました。
何度か繰り返して次へ。

 

右刀
説明はいつも同じです。前後に分け開く。中心の動き。
抜きながら回ってしまっては、刀が大きく遠回り。良い動きとは思えません。
座った状態ですでに開きすぎな状態とも言えます。逆に閉じるように前方へ。
開く動きで閉じるって、なんだか矛盾しているようですが。
現実には、矛盾はよくあることです。
ただそれは、理解が浅いせいでそう感じるだけなのかもしれません。
横に座って、柄と鞘を前後に分け開いてさしあげます。
それでイメージはつかめたようです。
回ってしまうと回りすぎてしまう。腕で抜くと抜きすぎてしまう。
これも実感できたようです。
ただ、実際にそれを体現するには、まだまだ稽古が必要です。

 

當刀
お上手です。左刀の稽古のあとだからでしょうか。とくに問題ありません。
ただ、振りかぶりの膝送りで後ろ足が前足とクロスしてしまいます。
前後の足が一直線上にあっては、血振るいでまっすぐ立ち上がるのが難しい。
工夫が必要でしょう。

 

陰陽進退
二回目ですが、お上手です。
手順も間違えず。器用ですね。最初に一度抜いて見せたからでしょうか。
あとは勢いで動かずに、でも止まらずに。
立ち上がっても立ち上がらない。
張り受けから運剣はゴムのように。決して止まらない。
そういったところでしょうか。

 

流刀
どうしても止まりがちですが、それでもなんとか。
血拭いの体勢がつらいと。きっと無理があるからなのでしょう。
力を抜いた結果に落ち着いた形なのではなく、故意に作ったカタチ。
力を抜くことで動きます。よりリラックス。
極めの形で力むのではなく、より力を抜かなければいけない。
外形のみを取り繕っている間は、得られないことかと思います。

 

順刀
最初に刀をすっと抱え上げながら、右足を半歩踏み出します。
この半歩はついおろそかにしがちですが、とても大事な半歩です。
もちろん、大事でない動作なんて一つもありませんが。
この半歩だけで、そけい部の弛みができているかどうかがよくわかります。
静かにすっと動きます。

 

逆刀
あまり覚えていらっしゃいませんでした。
右足を半歩踏み出して、刀を抜きかけてやめてしまいました。
もちろん動作の順番は覚えていらっしゃったことと思います。
でも、似てはいますが、違う動きです。形がどうということではなく。
それが自分でもおわかりになったのでしょう。


もう一度、抜いて見せます。
手順はなんとか真似できますが、やはり違います。
最初の半歩が、もうすでに違う。体がガチガチです。
そこからすーっと静かに、左足を引きながら刀を抜きだすことができません。
地味ですが、とても難しい動きです。体重を感じさせない不思議な動き。
私もそういえば、自分でなんだか違うなあと思いながら稽古をしていたのでした。
それでもいつの間にか動けるようになったのは、英信流表や奥の稽古を続けていたからでしょうか。

 

貫汪館でも、大森流を最初に稽古します。
ですが、大森流が初心者用の簡単な技術体系である、とは考えません。
十一本と少ない数ですが、高度な内容を含んだとても素晴らしい技術体系です。
手順を覚えてそれで終わり。さあ次は英信流表、というようなことではない。
太刀打詰合の稽古に進んでも、大小詰大小立詰を稽古するようになっても、大森流は大森流です。毎日稽古する価値のあるものです。

 

時間をかけて、しばらく繰り返しました。
簡単なように見えて実は難しいのだ、ということさえわかっていただければ。
できてもいないのに、順番さえ覚えてそれでよし。

とされることだけは忌避しなければなりません。
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さてさて、逆刀までは前回の復習です。
と言いながら、けっこうな時間を費やしてしまいました。

やっぱり前回できるだけ進んでおいてよかった。

 

逆刀までができてさえいれば、あとは少し形が違うだけです。
もちろん理屈はそうですが、実際はそう簡単ではないことを実感するばかりです。
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勢中刀
同じように一度抜いて見せて、動作を言葉で説明して、想定の説明も。
右刀と同じ感じでしょうかと。まあ一般的にはそう説明しますよね。
どちらかというと右刀にはあまり似ておらず、逆刀に似ています。
とお答えしました。構成上、逆刀の次の業ですし。
特徴的なのは、左足を引きながら抜きつけるところでしょうか。
もちろん間合いによっては、右足を踏み出して抜きつけることもあるでしょう。
例によって状況次第です。

 

木刀で想定の確認。
立った相手が振りかぶった瞬間、あるいは下ろしてくる瞬間。
その間と間合いで、右足を踏み出して抜きつけます。

あるいは左足を引いて。
実際にやってみれば、その理はよくわかることでしょう。
ですが、我田引水な説明では困ります。
打太刀が振りかぶったまま止まって、ただやられるのを待つとか。
届かない間合いで剣を振りかぶるとか。

いないところを斬るとか。
そういうのを見るたびに、時代劇のやられ役みたいですね、と申し上げます。
あるいは、間合いが合わなくて、相手にちょっと下がってもらうとか。
一人できれいな形を抜くことが目的であれば、なんの関係もない話ですけれども。

 

初発刀左刀右刀當刀陰陽進退と大きな血振るい。
流刀順刀逆刀で血拭い。左右立座。
勢中刀でまた大きな血振るいに戻ります。
陰陽進退までは座姿勢から立ち上がりながらですが、勢中刀は立ったまま。
つい、腕に力を入れてしまいがちです。見栄えや力感、実感を求めてしまうから。
ただ開いて、吊り下げ、肘をすとんと落とすだけ。

陰陽進退までですでに稽古しました。
あくまでも技術ではなく、こころの問題です。
よくよく稽古しなければなりません。
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虎乱刀
さらっと抜いて見せます。するすると歩みながら。止まらずに。
よくわかりませんでしたと。あらまあ。
普通のスピードでゆっくり抜いたのですけれども。
言葉で説明しないとわからないようではちょっと困りますよね。
歩きながら抜いて斬れば良いだけのことです。

 

右足と左手、左足と右手、なんて説明しながらやると、途端におかしな動きに。
文章で説明すると、そうならざるを得ません。でもやっぱり違う。
まずは動きありきであって、写真や言葉が元ではありません。
動きを写真に撮ったり言葉で説明することはもちろんできますが、
でも不可逆な気がします。

 

抜きつけまでなんとかできましたが、運剣斬撃でまたいつもの癖が。
私の眼には、とても不自然な動きに映ります。
斬撃の稽古は、歩法の延長でした。刀を振る稽古ではありません。
虎乱刀も、歩法の延長なのではないかと思います。
ただするすると歩み、ただ抜いて、斬ります。
色は必要ありません。それが難しいのですが。つい実感を求めてしまいます。

 

大森流も太刀打も、別の物ではありません。すべて一つのものです。
無双神伝英信流抜刀兵法という一つの流派です。

いずれも、同じように動けなければいけません。それが流派というものでしょう。
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抜打
今回は稽古しませんでした。
形だけなら簡単にお伝えできますが、そんなに簡単なものではありません。
単純だから簡単、ということでは決してなく。シンプルだが、イージーではない。
簡素な形ほど誤魔化しが利きません。より高い質が求められます。

 

十本で構成されるグループの中で、十一本目なのも意味深長です。
ゆめゆめおろそかにはできません。次回以降のおたのしみ。
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8時45分に稽古終了。2時間30分の稽古でした。
前回は新しく8本の稽古でしたが、今回は新しく2本の稽古。
数はだいぶ違いますが、中身の濃さは相変わらずです。と思います。

 

デンさん、いらっしゃるときは横浜経由ですが、帰りはあざみ野経由。
あざみ野経由の方が時間が掛かるそうですが、おかげであれこれとお話ができます。


来週はまたあざみ野での稽古です。お間違いのないよう。

お待ちしております。

H26.3.21