よう剣あるいは鬼手仏心

五尺棒を持って小学校へ。

春になって稽古を再開されたショウタロウくん用です。

 

いつもよりだいぶ早く家を出て、30分前に到着。

それでも、すでに校門前に刀袋を担いだ男性の姿あり。

そう、コバヤシさんです。

<なかば予想通り。だから早く家を出たのでした。

いつもより一本早い電車に乗れたとのこと。

遠方からのお越しですと、時間の調整も大変ですよね。

よくわかります。

 

ご挨拶して、体育館へ。二人でモップ掛け。

さて、さっそく稽古着と袴を用意されたとのこと。

うん、やる気まんまんですね。善哉善哉

帯の結び方については、体験にお越しになる前に勉強されていて。

でも袴の付け方はまだとのことでした。

うん、もーまんたい。大丈夫

皆さんがいらっしゃる前に、二人で着付け。

新品の袴なので少し固い。でもすぐに着慣れることでしょう。

裾は少し長め。前下がり後ろ上がりにすると、少し引きずる。

一度、軽く水洗いしても良いかもしれませんね。

そうすれば、柔らかくなって、裾の長さもちょうど良くなるかも。

洗濯する場合は、型崩れしないようにご注意を。

きちんと畳んで、襞を仮留めして、ネットに入れると良いでしょう。

 

男二人で、袴の着付けをしていると。

カジタさん、ヒカルくん、ハセガワさんご到着。

うん、なんだか変なところを見られたような。

でもなんでもないですからねー。<当たり前か

 

ところで、ショウタロウくんの姿がありません。

いつもお早く、元気な声でお越しになるのに。

今日から最後まで稽古すると連絡があったばかりなのに。

渋滞にでも巻き込まれたか。。。

いずれにしろ、車の運転中に連絡するのもご迷惑ですよね。

こちらからは連絡をせずにお待ちすることにしました。

 

テヅカさんは今週もお休み。なにかとお忙しいことです。

 

さて、稽古開始です。

------------------------------

<澁川一流柔術>

 

○棒廻し

 立ち方、足の向き、腰の位置などなど。

 棒を器用に回す稽古ではなく、体作りの稽古と思いましょう。

 小器用になるのが目的ではなく、大事な幹作りです。

 

○六尺棒表八本

 向かい合って素振り、二人一組で棒合。回り稽古

 

 いずれも、コバヤシさんに合わせてゆっくりと稽古。

 初心者の方がいらっしゃると、とても良い稽古になりますね。

 基本を確認する良い機会です。

 初心者の方を邪魔だなあ。なんて思う人は、上達は難しい。

 

 六尺棒。自分の身長よりも長くて、重い。

 普通の人は、ただ持ち歩くことすら難しいことでしょう。

 それが皆さん、器用にくるくると廻したり、打ったり突いたり。

 すべて、稽古の積み重ねによるものですね。

 それが普通だと思ってはいけない。自分も昔はできなかった。

 できないのが当たり前なのですから。

 それを自覚することで、上達のヒントも得られるかもしれません。

 

 下手こそは上手の上の限りなれかえすがえすもそしりはしすな

 

 コバヤシさん、とても上手になられました。

 今は、稽古すればするほど上達する時期です。

 楽しくてしょうがないですよね。ん?

 わけもわからずやっているだけで、とてもそんな余裕はない?

 あは、そうかもしれませんね。

 でも、それを楽しみというのでしょう。

 なんでも、簡単にできてしまっては楽しみがありません。

 

さて、そうこう(稽古)していると、入口の扉が開く音がして。

すわ、ショウタロウくんかと思い、入口の方へ。

果たしてそこにいたのは、ショウタロウくんでした。

でも洋服姿で。でもって、すっかり慌てた様子で。

でもこちらはわざと平静を装って、あれ、どうしたの?なんて。

大変なときにあわててはいけない。大変なときこそ落ち着いて。

着替えて家を出る直前に、急に体調がおかしくなったとのこと。

これから病院に行くので、稽古はお休みしますと。

あらまあ、よくもまあそんな状態でわざわざお越しに。。。

お大事にしてください。稽古はいつでもできます。

まずは体を大事に。また来週、お待ちしています。

 

○半棒表十二本

 打太刀で元に立って、掛かり稽古方式で。三本ずつ。

 コバヤシさんは、一本目だけ繰り返し。

 

 上級者。自分たちだけで稽古をして、また掛かり稽古をして。

 あらためて、思うところもあるでしょう。

 そうして、上達していけると良いですね。螺旋階段のように。

 

 コバヤシさん、とても上手になられました。

 稽古をするたびに上達をする。また来週も楽しみですね。

------------------------------

<大石神影流剣術>

 

○構え素振り

 向かい合って、同じ構えを何回か繰り返してから、次の構えへ。

 

 足の位置、向き、角度。

 膝の位置、向き、角度。

 腰の位置、向き、角度。。。

 きりがありませんね。

 

 すべて、何センチ、何度と決まっているわけではありません。

 でも、これ!というのがある。それがなんなのか?

 それを探るのも稽古でしょう。

 あるいは、それを探るのこそが稽古でしょうか。

 レシピはあっても、だからと誰でも上手にできるわけではなし。

 レシピは、必要最低条件でしかない。

 それをどう再現するか。工夫と研究が必要ですね。

 決して、自己流を求めるのではなく。

 

 コバヤシさん、肩の力を抜きましょう。

 まずはそこからですね。そして次はあれと、これと、それと。

 やることはたくさんです。楽しみですね。

 

○試合口五本

 最初に示範。打太刀はハセガワさん。気合

 

 続いて、二人一組で稽古。打太刀と仕太刀

 カジタさん&コバヤシさん

 ハセガワさん&ショウタロウくん

 

 カジタさん

  初心者の力技&予想できない動きに、どう対処するか?

 

 ハセガワさん

  自分よりはるかに小さく非力な相手に、どう合わせるか?

 

 いずれも稽古の醍醐味ですね。ふふ

 

 ヒカルくん

  五本目の受け流し。刀を頭上高くに掲げましょう。

  きちんと身を守って、相手の攻撃を受け流すこと。

  腕の力だけでなく、全身を遣って。

 

 コバヤシさん

  よくもまあ、五本をきちんとできることです。素晴らしい。

  多少、形が違うのはどうでもいいこと。枝葉末節

  少しずつ、手直ししていきますので。お楽しみに。

 

○陽之表 一本目よう剣

 打太刀で元に立って、掛かり稽古方式で。

 上級者も、よう剣だけ繰り返し。

 

 とにかく、まっすぐに振ることです。正確に、ただ中心を。

 打太刀の剣を払おうとしてはいけない。とにかくまっすぐ。

 まだ振り下ろしきってもいない打太刀の剣。

 中心にはまだない打太刀の剣。

 それに打ち当てに行く。そんなことがあってはいけない。

 打太刀の真っ向をカチ割る。ただ、それだけが目的です。

 

 学生の頃、毎年、茨城県の岩間に合宿に行きました。

 そこの先生は、とにかく怖いと評判で。

 なにか少しでも間違ったことをしていると、

  たーっ!!! そこぉ、なにしとるかー!

 と雷のように怒鳴られて。

 でも、向こうの方からわざわざとんできて。

 とっても丁寧に、正しい技を教えてくれるのです。

 そして普段は、とっても好々爺。農家のお百姓さんみたい。

 息子さん先生も同じような御気性でした。

 地方性なのか、血筋なのか、あるいは開祖伝来なのか。

 ああ、雷ってこんな感じかなーと思ったものです。青天の霹靂

 何の前触れもなく、突然ドンガラピッシャーンと。

 そしてあとにはなにも残さず。ただ、その一瞬だけ。

 雷神ゼウスかトールか。

 

 どうでもよければ、わざわざ教えはしないでしょう。

 そもそも、怒りもしない。どうでもいいなら。

 きちんと教えたいから、怒る。

 そして、あとにはなにも残さない。別にその人が嫌いなわけではなし。

 嫌いではないからこそ、教えるのだし。

 いつもそんなだと、教わる方もちょっと疲れるかもしれません。

 でも、指導方法の一つとして、ある面では有効かと思っています。

 必要と判断した限られた場合にのみ、活用しています。

 鬼手仏心です。

 

 今週は皆で、よう剣だけを稽古しました。

------------------------------

<無双神伝英信流抜刀兵法>

 左足の親指に大ケガをされたカジタさん。

 先週までは足袋も履いていませんでしたが、今週は履いていて。

 居合の稽古も、やってみるとのことでした。

 居合では、左足の親指に負担がかかりやすいですね。

 完治まで半年かかるとか。決して無理はしませんように。

 

○大森流十一本&英信流表十本

 カジタさん、ヒカルくん、ハセガワさんとそろい抜き。

 一通り一緒に抜いて、あとは各自で稽古。

 

 コバヤシさんは見取り稽古。

 まずは「見る」ということが大事。見て覚える。見て、感じる。

  貫汪館の古武道とは、こういうものですよー。

 というのを肌で感じてもらうこと。

 

 貫汪館で稽古しているのは、居合、剣術、柔術の三流派。

 その中でも、とくに居合が特徴的かと思っています。

 剣術は、気迫のすごさに気を捕らわれてしまうかも。

 柔術は、投げ技や押さえの痛さに気を捕らわれてしまうかも。

 でも、居合は無声で、派手な動きもなし。眠くなるようです。

 もしそれを退屈だと思うようなら、貫汪館には向いていない。

 他にいくらでも、向いている道場があることと思います。

 わざわざ遠方からお越しです。ご自分で、貫汪館を選ばれた。

 きちんと見極めて、体得して欲しいと思っています。

 

○礼法

 コバヤシさん、見取り稽古を終えて、横浜支部長とマンツーマン。

 ご自宅で稽古されましたかー?とお聞きすると、

 はい何度か、と。おお、それは素晴らしい。

 さっそくやっていただくと、たしかに自主稽古の成果あり。

 稽古をすれば上達するし、しなければ上達しない。

 当たり前のことです。稽古はウソをつきません。<筋肉体操

 

 少し手直しをしながら、一緒に何度か繰り返し。

 神前への礼は、とにかくうやうやしく。清々しい気持ちで。

 相手は神様です。これで十分ということはありません。

 

 お辞儀をすることを礼法というのではなし。

 立ち居振る舞いすべてが礼法です。

 立ち、座り、歩く。手の上げ下げ、頭の左右、目で見ることも。

 言ってみれば、武道の基礎、基本ですね。

 これができなくて、形ができるわけもなし。

 礼法を見れば、その人の腕前もわかるというものでしょう。

 袴さばき一つとっても、おろそかにはできません。

 

 今回は袴がありましたから、袴さばきの稽古ができました。

 帯刀と脱刀の稽古もできました。

 下げ緒があれば、下げ緒さばきの稽古もできます。

 次回までにご用意いただければと思います。

 

○質問タイム

 各自で稽古をしていただいた、お三方。

 なにかありますかー?とお聞きすると、、、

 

ハセガワさん

 英信流で立ち上がるときに、刀の助けを借りても良いですか?と。

 おおっ、素晴らしい。いい質問ですねー。

 

 なにをするにも、刀は助けになります。

 腰に刀があると、左右のバランスが崩れる。

 なにもないと、不安な感じ。左右均等だから。

 宇宙空間に放り出されたような、不安感があります。

 右腰に刀があると、それをきっかけに動きだすことができる。

 歩く稽古でも、刀があった方が、動きやすいですね。

 対称性の破れは、宇宙の創成です。

 プラマイゼロでは、なにも始まらない。残らない。対消滅

 

 浮雲で、柄頭を引っ張られるように立ちあがるように。

 山下風で、柄頭の回転に誘導されて体が回るように。

 初発刀の抜き付けで、刀に引かれて体が前方に転がるように。

 英信流の座法では、一度さらに沈んで、そこから浮き上がる。

 その際、刀を開く動きも助けになることでしょう。

 真横に水平に開くのではなく、上方に半円を描いて開きます。

 

 刀は、稽古の良い導き手です。刀の声を聴きましょう。

 決して、力で乱暴に振り回す道具などではありません。

 

カジタさん

 右刀で質問がおありと。おおぅ、渋いですね。

 抜き付けで鞘鳴りがしてしまうとのこと。

 さっそく、やってもらいました。うん、さもありなん。

 

 鞘鳴りの原因は。

  現象面としては、鞘と刀身の角度の相違。<当たり前

  心理面としては、抜こうとすること。<これダメ

 

 大森流は、すべて初発刀の応用変化です。とは言え。

 それは極論、できる人の話であって。

 すべては一つ!というようなもの。

 稽古の段階にあっては、区別をする必要もあるかもしれませんね。

 

 左刀も右刀も當刀も、初発刀の向きが違うだけ。

 うん、たしかにそうなんだけれども。

 左刀と右刀では、術理が違いますね。

 違いを意識することで、同じがわかる。

 同じを意識することで、違いがわかる。

 すべては同じと思い、すべては違うと思い。

 どちらも正しい。矛盾こそが正解。真理。

 そう思っています。

 

 右刀の特徴は、もうすでに抜けていること。とお伝えしました。

 言葉にすると、まるで禅問答のような。

 でも実技を交えて説明すると、ああなるほどと思えるかも?

 いずれにしろ、得心はしていただけたようです。

 あとは実技がともなうかどうか。

 これはもう、稽古するしかないですね。

 幸いにも、鞘鳴りせずに抜くことを示範することができました。

 疑いの余地はないことでしょう。迷わず稽古を。

 

ヒカルくん

 初発刀の抜き付けで、鐺が床に当たると。うん、大事ですね。

 居合刀を今週から長いものに替えました。それが原因かも。

 でも、理由ではない。

 どんなに長い刀でも、鐺を床に当ててはいけない。大事です。

 

 鞘は、とても大きく動かします。とくに英信流表では。

 でも、大森流では、鞘は前後にしか動かさない。

 鐺を左右に振ったり、上下に振ったりはしない。

 帯に差しなりに、前後にスライドさせるだけです。

 これは、抜き付けでも、納刀でも同じ。

 例外は、順刀と抜打で右腰に抱えることくらいでしょうか。

 

 正座した状態で、とても長い刀では鐺が床に着くくらいです。

 そこからそのまま抜けば、良い話ですね。

 まして、腰を上げて抜き付けます。鐺は床から大きく離れる。

 実際の動きとしては、鞘ごと抜き出して、鞘を払う。

 それが抜き付けの動き。

 腰を上げる動きと鞘を引く動きの連動、タイミング。

 鞘を前後にスライドさせるべきところを、上下に振ってしまう。

 原因は、そういったところでしょうか。

 実際にはこれにさらに、上体の前掛かる動きが加わります。

 ここら辺がわかるようになると、流刀も変わるかもしれません。

 そしてそのヒントは、逆刀にもあり。

 大森流は、すべてが有機的に関連しています。

 あれがわかるとこれもわかり、あれができないとこれもできない。

 まるでパズルのようですね。ふふ

------------------------------

さてさて思いの外、質問タイムが長引いて。

定刻を大幅に過ぎてしまいました。

稽古をしている皆さんはご満悦?

でも、ご家庭でお待ちの皆さんにはご迷惑をお掛けしました。

すみません。

 

次回からは、質問タイムも予定に組み込むことにしましょうか。

でもまあそう毎回毎回、質問があるわけでもないですよね。あは

 

コバヤシさんの着替えをお待ちして、皆で体育館を出て。

道すがら、お話しながらお見送り。

帰宅は23時ごろで、それから食事とのことです。

いやはや、大変ですねえ。。。

でも、来週もお待ちしていますので。

 

来週も通常通りの稽古です。

 

 

<<前の日記:春の稽古

 

>>次の日記:第37回 浅草日本古武道大会