貫汪館 横浜講習会2 大石神影流剣術(試合口・陽之表)&無双神伝英信流抜刀兵法(詰合)

大寒の前日、貫汪館横浜支部で貫汪館横浜講習会を開催いたしました。
9人の方から申込・参加をいただき、名古屋西支部長と横浜支部会員を合わせて11人での講習会となりました。

 

今回も20代女性から70代男性まで、他流派・他武道の経験者や劇団の方々、地元神奈川から東京、栃木、名古屋まで、幅広い方々にご参加いただきました。

前回に引き続きご参加いただいた方も4人ほど。
大石神影流剣術に興味がおありで、初めてご参加いただいた方もお一人。
栃木からご参加いただいた方は、外はまだ暗い5時半に家を出られたとのこと。頭が下がる思いです。

 

午前は大石神影流剣術の構え、素振り、試合口五本、陽之表十本のうち五本、午後は無双神伝英信流抜刀兵法の詰合を、貫汪館館長に指導いただきました。

冬の冷え込みが心配されましたが、幸いにも当日は晴れの天気となりました。体育館の床は冷たく、足袋を履いていても足の裏から冷えが伝わってきましたが、動いている間はそれほど気にならなかったのではないかと思います。

 

今回も御蔭様で多数の方にご参加いただき、盛況のうちに無事に講習会を終えることができました。この場をお借りして、御礼を申し上げます。
次回は2月11日(火)祝日に開催を予定しております。
また多数の皆さまのお申込・ご参加をお待ちしております。
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自宅で着替えを済ませて、8時に家を出ます。
館長にはご自分の刀をお持ちいただき、大石神影流の木刀12本をかつぎます。常寸の鞘付き木刀やその他の備品など諸々は、美人秘書に持ってもらいました。
体育館に到着してあれこれ準備をしていると、さっそく皆さんがお越しに。ご挨拶をして、道衣や袴をお持ちでない方にはお貸しして着付けの手伝いなど。
モップ掛けは皆さんが手伝ってくださって、あっという間に終わりました。
皆さんに大石神影流の木刀をお貸しします。常寸より長い総長三尺八寸です。
受付をして、芳名帳に記名していただくのに少し手間取ってしまいました。
9時を少し過ぎて、講習会の開始です。

 

大石神影流剣術
構え  真剣、上段、附け、下段、脇中段、脇上段、車
素振り
試合口 一心 無明一刀 水月 須剣 一味
陽之表 よう剱 げっ剱 無二剱 二生 稲妻

 

構えと素振りは館長の指導のもと、お手伝いをして回りました。
構えはいずれも簡単なものですが、やはりなんでも初めては戸惑うものです。

手数では二人一組になっていただきます。
本来なら上級者と組んでいただきたいところですが、なかなかそうも行かず。
身長や体格などを拝見して、組み合わせをこちらで指定します。
11人のご参加でしたので、私もお一人の方と組みました。

 

試合口の手順は、とてもシンプルです。
打太刀の打ち込みや突きを請けて張り、諸手突き。あるいは小手、受け流し。
張る動きに皆さん苦労されていました。小さな動きで大きな威力を出すことが難しいようです。
顔面に突き込む動作が難しいのは、心理的な抵抗があるのかもしれません。
現代剣道の経験がある方は、つい喉を突いてしまうようです。

 

陽之表は、やや手順が込み入ってきます。
動作がシンプルでも、気攻めが必要だったり。
気合も掛けますので、動作と発声を同時に行うのも難しさの一つかもしれません。
午前中で無事に陽之表十本のうち前半五本までを稽古することができました。
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昼食休憩をはさんで、午後の講習会です。

お一人がお帰りになられて、午後は10人での稽古。
ペアの組み合わせを少し変えて、私も館長の指導のお手伝いに回りました。

 

午後は常寸の鞘付き木刀を遣います。ほとんどの方はお持ちでしたが、
お一人の方がお持ちでらっしゃらなかったのでお貸しいたしました。
鞘のない木刀を自由に振り回すのと、鞘から抜いて斬ったり受けたりするのでは技術的にも心理的にもかなり異なるものがあるかと思います。
剣術と居合の違いの一つかもしれません。

 

無双神伝英信流抜刀兵法
詰合

稽古に先立って、立膝の座り方を稽古していただきました。
慣れないと板の間で正座するだけでも足が痛くて難しいものですが、
皆さんきちんとできていらっしゃいました。
ただそこから足を引いて抜き付け張り受けするのは、また別の話です。

 

発早
打太刀の足への抜き付けを、足を引いて張り請けし、真向へ打ち込みます。
柄頭が接するほどの間合いに詰めて座りますので、お互いに抜き合わせる
だけでも一苦労です。
柄を前に出すことなく抜き付けるのも眼目の一つですが、これはなかなか。
相手の目の前に柄を出しながら抜くのがやっとというところです。
本来なら、片手で柄をひょいっと外してしまえばこちらの勝ちです。
抜き合わせるまでもない。ただまあそこはおいおい。
真っ向を請けるのもなにげに難しいものです。本来なら上級者の仕事です。

 

拳取
発早と同じように抜き合わせ、拳を取ると同時に相手を突きます。
拳を取ることと突くことを別に考えてしまうとできるものではありません。
また、きっちりと相手の剣を制しておかないといけません。
シンプルですが、油断のならない業です。もちろんどの業もそうですが。
腕先で動くのではなく、肚で動くことができているかどうかがよくわかります。

 

太刀打の出合と附入と同様、詰合の発早と拳取はセットになっています。
業の構成としては、前半は同じ動作で後半が変化。
さてなぜ変化したのでしょうか。単なる例示なのか、なにかが違うのか。
一考を要します。

 

岩浪
同じように抜き合わせ、相手が拳取に来るのを返します。
一本目が居合術的で、二本目がやや柔術的、三本目は完全に柔術と言えるかも知れません。
ただもちろんこれは便宜上の区分であって、こうやって区分している間は、本当の意味での上達は難しいかもしれません。すべてが居合です。抜刀兵法

合気道の小手返しと似ていますが、もちろん違う点も。肘のかがみを攻めます。
どうしても手足体をばらばらに使ってしまいますが、全体を同時に遣います。
すっと回って、体重を掛けて相手を制する。
上下がばらばらに動くとねじる動きとなって、逆に軽くなってしまいます。
柔らかく、しかし重い、抵抗し難い力がいいのではないでしょうか。

足で蹴って動いている間は、できないのではないかと思います。

 

八重垣
打太刀の連続する打ち込みを請けて制します。
形では斬る場所や回数は決まっていますが、もちろん自由に対応ができなければ意味はありません。

 

鱗形
太刀打の絶妙剣と同様の技法ですが、座姿勢であるというだけで、難易度は飛躍的にアップします。

ただ実際には、座姿勢でできなければ、立ち姿勢でもできるわけがなく。
単に立ち姿勢では誤魔化しやすいというだけのことかと思います。

やはり座姿勢は良い稽古になります。

座ったままの状態で重心を上下させることなく後ろ足を一歩前に進めるのは、なかなかの難しさです。一つの壁と言えるかもしれません。

 

位弛
さて、とてもシンプルな形です。ですが果たして、きちんとできるかどうか。
打太刀は立って抜刀しており、仕太刀は座って納刀しています。
誰がどう考えても打太刀の方が有利なようですが、果たして実際はどうでしょう。低い位置を斬るのは、何気に難しいものです。
合気道を1年ほど稽古している方は、とても上手に動いていらっしゃいました。

合気道と居合は、相性がいいのではないかと思います。

 

燕返
さてさて詰合の難関の一つと言えるでしょうか。手順の多さはダントツです。
館長が簡単に説明をされて、館長と私とで二三回示範をしました。
ですがそれだけです。そして、さあやってください、と。
さてどうなることかと見ていると、ほとんどの方がきちんとできていました。
ある組は、これで本当に初めてかと思うくらい動けていてびっくりです。
柔道合気道剣道の有段者で他もこだわりなくあれこれと稽古されている方と、他流経験者で前回講習会と引き続きのご参加の方のペアではありましたが。
動きを区切ってしまう癖がありましたが、指摘するとすぐに直ってしまいました。

一つ一つの動作に自分のスピードとパワーを求める方法もありますが、

止まらず相手の力を利用して流れる方法もありますと提示しただけなのですが。
組んで攻防をすると、早さに圧倒されてしまって勘違いをしやすいようです。
横から見てもらうと、実際のスピードは大したことがないと得心できるようです。

力もまるで入れていません。
止まらないで動くことができれば、あとはいくらでも速くすることができます。
いくらでも、は言いすぎかも知れませんが。

 

歩み足、継ぎ足、一足、二足いろいろあります。

いずれも間違いというほどのことではないのではないかと思います。

自由に攻防できることこそが大事。
もちろん形の稽古ですから、あまりにばらばらでも困ってしまいますが。
中には形の手順をあれこれと言葉で説明しあっている組もありましたが、
逆に動けなくて困っているように見受けられました。
もちろん動けないから言葉に頼るのでしょうが、それは悪循環かもしれません。

鳥は航空力学など知りませんが、自由に空を飛ぶことができます。
ひな鳥は、親鳥から羽ばたき方を言葉で教わることもありません。
ただ見て、真似をして、そして覚えます。
そしてある程度まで覚えたら、あとは自分の工夫あるのみです。
燕返は手順は多いですが、技術としては簡単な方なのではないかと思います。

 

眼関落

太刀打の独妙剣とほぼ同じ技法です。
力と力のぶつかり合いでは、大きな相手に勝つことは難しい。
力を抜いてぶつからないことの大切さを教えてくれる形の一つかと思います。

 

水月

太刀打の水月刀とほぼ同じ技法。

間と間合いが難しい業です。それこそがこのシンプルな形の眼目かと。
相掛かりの形が多い中、この形では打太刀は待ちますが、それでも難しい。
仕太刀は斬るのでもなく、突くのでもなく。
打太刀はさらに難しい。動作としては、ただ払うだけなのですが。
よくよく稽古したい業の一つです。

 

霞剣
残念ながら時間がなくて、今回は稽古できず。
カコヨクてお気に入りの形の一つなのですが。
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3時を少し回って、講習会は無事に終了となりました。
午前は3時間、午後は2時間でしたが、あっという間の一日でした。
モップ掛けはまた皆さんに手伝っていただき、木刀などの片付け。
皆さんを見送って、体育館をあとにします。

 

館長には拙宅で着替えていただき、お風呂と簡単なお食事を。
大石神影流の木刀12本は、館長に広島から事前にお送りいただいた物ですが、2月の講習会までお預かりすることに。我が家には一体何本の剣があることか。
館長を駅までお見送り。

帰宅して、あれこれと片付けをして、やっとひと段落となりました。

 

講習会は事前の準備、当日の運営、後片付けなどなにかと大変なものです。
ですがそれ以上に、自分の稽古にもなります。
形を繰り返すことだけが、稽古なのではないのではないかと思います。
そしてなにより、参加していただいた方々が少しでも楽しい時間を過ごしていただけたのであれば、とてもうれしく思います。

H26.1.25