貫汪館 横浜支部 稽古納め

日本各地で大雪となった年の瀬、貫汪館横浜支部の稽古納めを行いました。
横浜では雪は降りませんでしたが、冷え込みは外を歩くと耳や手が痛くなるほどですし、足袋に雪駄の足元はスースーします。

いつもどおり居合刀と鞘木刀を肩に担いで小学校へ向かうと校門の前に人影が。
いつもより一本早いバスに乗れたとのこと。
寒い中お待たせしてしまい、申し訳ないことをしてしまいました。
門の鍵を開けて、体育館の鍵を開けて、明かりをつけて、二人でモップ掛け。
刀の準備をして、あれこれと雑談をしながら着替えをお待ちします。

いつもどおり、定刻より1~2分早く稽古開始です。
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今回は歩法から。
そけい部を弛めること、半身をキープすること、足を遣わないこと、
動きに区切りをつけないこと、勢いをつけないこと、などなど。
刀を抜いて正面に構え、同じように歩きます。
ゆっくり静かに、ていねいに繰り返します。

前回はかなりぎこちなかったのですが、今回はだいぶよくなりました。
やはり初めてと二回目では大きく異なります。
蹴ったり、足先を振り出したり、ぐっと踏み締めたりするたびに指摘をすると、ご自身でもわかるとのこと。であれば、あとはご本人の稽古次第でしょう。
つけていただいている稽古録も、とてもよく書けていました。
集中して、とりこぼすことのないよう、真摯に稽古に取り組んでいただいていることがとてもよくわかります。

油断するとあっという間に時間が経ってしまいます。
早めに切り上げることにしました。
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大石神影流

構え
 真剣 上段 附け 下段 脇中段 脇上段 裏附け 車

今までは試合口の稽古だけでした。
順番は前後しましたが、今回、構えの稽古をいたしました。
構えを覚えても手数ができるようにはなりませんし、手数の順番を覚えるだけなら構えの稽古も必要ありません。
しかし、手数をきちんと稽古するには、構えの稽古は必須です。当たり前ですが。

試合口で遣う構えは真剣と上段のみです。
そして真剣と上段を交互に繰り返す動きは、そのまま素振りになります。
他の構えも、そこから真剣に戻る動きがそのまま素振りの動きになります。
一つ一つの構えを取ってもらいながら、そのたびに真剣に戻ります。
いわゆる現代剣道の五行の構えとは違うこと、そけい部を弛めること、
などをお伝えしました。

 

試合口
 一心 無明一刀 水月 須剱 一味

いつもどおり、向かい合って立ち、いきなり始めます。
いつも最初は戸惑われますが、そのうち思い出されるようです。
試合口の動作はとても単純です。請ける動き、張る動き、突く動き。
どれも簡単な動作ですが、でもなかなかスムーズにはできません。
忍耐強く、繰り返してもらいます。
交代して、仕太刀をさらっとやってみせて、終わりにします。

打太刀と仕太刀を交互に何度も繰り返せば、覚えはもっと早いのでしょう。
ただ、試合口だけで2時間の稽古すべてを使うわけにもいきません。
それに早く覚えたものは早く忘れてしまうものです。
非効率的に見えても、時間を掛けて覚えたものはいつまでも忘れないものです。
体にしみこむということなのかもしれません。
あわてずあせらず、繰り返し繰り返し、時間を掛けて覚えてもらおうと思います。

 

年が明けたら、陽之表の稽古に入ろうと思っています。
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無双神伝英信流

太刀打
 出合 附入 請流 請入 月影 水月刀 独妙剣 絶妙剣 心妙剣 打込 
いつもどおり仕太刀を通してもらい、交代して打太刀を通してもらいます。
本来なら、仕太刀のみを稽古してもらいたいところではありますが。

稽古録を拝見して、誤解して伝わっていた部分は訂正しました。
また今回は、各業の細かな術理も説明をしました。
一見単純な動作でも、きちんと行うことはなかなか容易ではありません。
単純な動作イコール簡単な動作ではありません。
シンプルだけれどイージーではない。
シンプルに用を済ませるためには、高度な技術が必要ということかと思います。
どの業をとっても、この業は簡単、というものは一本もありません。
単純な業ほど、難しいと感じます。

 

詰合
  発早 拳取 岩浪 八重垣 鱗形 位弛 燕返 眼関落 水月 霞剣
同じように仕太刀を通してもらい、打太刀を通してもらいます。
立膝の座り方はだいぶスムーズになりました。抜きつけや張り受けもだいぶ。
ただ、振りかぶりで止まるところが気になります。一瞬ですが、固さを感じます。
無自覚のようですが、剣の世界でこれは致命的です。
修正には少し時間がかかるかもしれません。意識の問題かと思います。

 

大小詰
 抱詰 骨防返 柄留 小手留 胸留 右伏 左伏 山影詰
年末の寒い中、わざわざお越しいただいているので、出血大サービスです。
というほどのことでもありませんが。もともと、隠すようなことでもありませんし。
お伝えしても、できるかどうかはすべてご本人次第ということです。

いつもどおり、状況設定だけお伝えして、受けをとってもらいます。
 両手で柄を取って、床に押さえ付ける。
 抜こうとする右小手を右手で押さえる。胸を右手で捕る。
 右から柄を押さえる。左から柄を押さえる。
 後ろから両手で組み付く。
説明もなしに一本ずつ業を掛けます。もちろんケガなどのないよう注意します。
交代して、口頭で説明しながら、やってもらいます。
さらっとひととおり。詳しくは、また次回。

 

自分が実際に業を掛けられた。しかも、わけもわからずにやられた、
というのは大事な経験かと思います。
それがあれば、その再現を求めて、稽古を重ねることができます。
こう決まっているからこうしてと言われて、わけもわからずただ繰り返す。
そういった稽古には、私は魅力を感じることはできません。
居合でも剣術でも柔術でも、同じではないかと思います。

 

初発刀
 鞘手、柄手、抜掛、離、運剣、斬撃、血振、納刀
二尺八寸の居合刀をお貸しして、抜いてもらいました。
いくら理屈を説明しても、短い刀であればどうとでも抜けてしまいます。
ですが、長い刀ではそうはいきません。
長い刀が抜けるのがすごいとかそういうことではなく。
無双神伝英信流抜刀兵法で求められている体の遣い方。
それを身に付けるために長い刀を稽古で遣うのです。
短い刀には短い刀の利と理があることでしょう。
長い刀には長い刀の利と理があることと思います。

抜いて見せて、抜いてもらい、説明して、一緒に抜いて。
しばらく繰り返しました。

必然的に求められる動きに自然になっていくのは、見ていておもしろいものです。

初発刀は二尺八寸で抜き納めができました。先の業になると果たしてどうなるか。

来年のお楽しみです。

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定刻を5分ほど過ぎて、稽古納めとなりました。
稽古納めと言っても、なにも普段と変わることはなく。

自宅での稽古は、大晦日も元旦もありません。
クリスマスも家族でチキンとケーキを食べて、いつもどおり稽古をしました。
稽古はとくに、特別な何か、ということではないのではないかと思います。
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この稽古日記を読んでくださっている方から“固い”とか“まじめ”との評をいただきました。
ダラダラと長い文章を書いているからそのように感じるのでしょうか。
コミカドケンスケさんの弁舌くらいのつもりで読んでいただけると幸いです。ちがうか。
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2013年は巳年でした。
貫汪館は今年、ヘビが脱皮をするがのごとく、大きな変化を迎えたかと思います。

 

2014年は午年です。
千里を走る馬のように、より一層の飛躍の年となることを願います。

皆さまも、よい新年をお迎えください。

 

貫汪館横浜支部の新年の稽古初めは、1月4日(土)です。
いつもどおりの稽古の予定です。

H25.12.28